事業者が取り扱う商品やサービスに付けられたネーミングを使って運用されるリスティング広告のことを、「商標リスティング」と言います。
商標キーワードはコンバージョンに近いキーワードなので、他のキーワードでリスティング広告を出稿するよりも、高い効果が期待できます。
しかし商標キーワードを使ったリスティング広告の運用は、事業者とのトラブルに発展しやすいのも事実です。
事業者から商標キーワードを使ったリスティング広告の運用を止めるように言われてこの記事にたどり着いた方もいるでしょう。一方で、競合他社やアフィリエイターが自社の商標で商標リスティングを行っていることに対して困っていて、この記事にたどり着いた方もいるでしょう。
そこで今回は、商標リスティングの概要や、商標リスティングのトラブルを避けるための対処法などについてまとめました。
本記事では、自社・競合他社・アフィリエイターの3つの視点から、商標リスティングについて解説しています。よってあなたがどの立ち位置から商標リスティングについて調べていても、役立つはずです。
ぜひ最後までチェックしてみてください。
目次
商標リスティングとは?
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
(出典:特許庁 商標制度の概要)
よって商標リスティングは、商標キーワードに対して出稿されるリスティング広告のことを指します。
例えばオンラインで高校受験やTOEIC等の対策ができる「スタディサプリ」の商標キーワードでGoogle検索をした際の検索結果は以下の通りです。
URLの左上に「スポンサー」と書かれているものが、リスティング広告として表示されているページです。
上記画像を見ると、自社による商標リスティングが2件、競合他社による商標リスティングが1件表示されています。
商標リスティングは運用者によって3つのタイプに分かれる
商標リスティングは、以下3つの種類に分類されます。
- 自社が自ら行うパターン
- 競合他社によって行われるパターン
- アフィリエイターによって行われるパターン
それぞれ詳しく解説します。
自社
自社商品やサービスの商標キーワードでリスティング広告を出稿するパターンです。
例えばGoogleで「Amazon」と検索をすると、以下のようにAmazonによって商標リスティングが出稿されていることを確認できます。
商標リスティングは、事業者側が「出稿を停止してほしい」と声をあげることで初めて問題になります。つまり自社の商標キーワードに対してリスティング広告を出稿する分には何の問題もありません。
むしろ自社の商標リスティングには、「検索結果の面積を2倍取れる」というメリットがあります。
上記の画像のように、自社で商標リスティングを行うことで検索結果の1位と2位を独占できれば、より多くのユーザーが自社サイトにアクセスをしてくれます。
よって敢えて自社の商標キーワードに対してリスティング広告を出稿する企業は多いです。
他社
競合他社の商標キーワードに対してリスティング広告を出稿するパターンです。
記事冒頭で紹介した「スタディサプリ」のGoogle検索結果画像にも、1件このパターンがありましたよね。
競合他社の商標キーワードに対するリスティング広告出稿には、問題になるケースと問題にならないケースがあります。
問題にならないケース | 問題になるケース |
---|---|
商標キーワードに対してリスティング広告を出稿している場合 例:商品Aの広告のために商品Bという商標キーワードに対してリスティング広告を出稿した。 | 商標キーワードをリスティング広告の広告文や説明文に含んでいる場合 例:商品Aの広告のために出稿した商品Bという商標キーワードに対するリスティング広告の説明文に「商品Bより1,000円安い商品Aがおすすめ!」という文言を掲載した。 |
つまり競合他社の商標キーワードに対してリスティング広告を出稿するだけでは問題にはなりません。しかしそのリスティング広告の広告文や説明文に商標キーワードを用いると、問題になってしまいます。
詳しくは後述しますが、商標権侵害に当たる可能性があるため要注意です。
アフィリエイト
Webサイトを運営するアフィリエイターが、商標キーワードに対してリスティング広告を出稿するパターンです。
アフィリエイトリンクが設置されているサイトによる商標リスティングは原則禁止されています。
例えばASP最大手のA8.netには、以下のような記載があります。
商標キーワードのリスティング出稿について
NGキーワードとして指定されていない場合でも商標ワードは対象外キーワードにご登録をお願いします。
また、商標の判断にお困りの場合は、固有名詞での出稿はお控えください。
(出典:A8.net リスティング広告の正しい運用で信頼と集客につなげよう)
また商標キーワードの誤字を狙った商標リスティング(例:Amazonの場合「Amazom」など)も原則禁止です。
さらに広告主によっては、商標キーワードであるかどうかにかかわらず、そもそもリスティング広告の出稿自体を認めていないケースも多いです。
これらのルールを破ってリスティング広告を出稿すると、ASPから広告の提携を解除されてしまうので注意しましょう。
競合他社やアフィリエイターが商標キーワードでリスティング広告を出稿する理由
競合他社やアフィリエイターが、トラブルや提携解除のリスクを抱えながら商標キーワードに対してリスティング広告を出稿するのには、以下2つの理由が考えられます。
- 商標キーワードはコンバージョンに近いキーワードだから
- リスティング広告の設定により意図せず出稿されているから
それぞれ詳しく解説します。
商標キーワードはコンバージョンに近いキーワードだから
検索キーワードには、コンバージョンに近いものとコンバージョンから遠いものがあります。
例えば「商品A 評判」や「商品A クーポン」のような商標キーワードを含む検索キーワードは、コンバージョン率が高いです。これらはいずれも、商品の購入を検討している方が検索をするキーワードですからね。
例えば「コーヒーメーカーA」と検索をする人は、何らかのコーヒーメーカーを購入しようとしています。
そこで「コーヒーメーカーA」の商標キーワードに対して「コーヒーメーカーB」のリスティング広告を出稿すれば、「コーヒーメーカーA」の購入寸前だったユーザーを横取りできてしまいます。
商標キーワードはコンバージョンに近いキーワードであるため、競合他社によってリスティング広告を出稿される可能性が高いです。
リスティング広告の設定により意図せず出稿されているから
競合他社やアフィリエイターが認識していない状態で、自社の商標キーワードに対してリスティング広告が出稿されることがあります。
これは、リスティング広告のキーワード選定に欠かせない、「マッチタイプ」が原因です。
マッチタイプとは、ユーザーが検索する語句と出稿されるリスティング広告を一致させるための設定のことです。
マッチタイプには、以下4つの種類があります。
- 完全一致
- フレーズ一致
- 絞り込み部分一致
- 部分一致
例えばリスティング広告に出稿するキーワードとして「Amazon」を指定したと仮定しましょう。上記4つのうち「完全一致」の場合は、「Amazon」と検索した場合でしかリスティング広告は表示されません。
一方でフレーズ一致の場合は、「Amazon おすすめ」のようなキーワードでもリスティング広告が表示されます。
このようにマッチタイプの設定によって、リスティング広告の出稿範囲を調整できます。
競合他社やアフィリエイターによる商標キーワードでのリスティング広告出稿は、必ずしも故意的なものとは限りません。
マッチタイプについてきちんと理解をしていないまま、リスティング広告を出稿しているケースも考えられます。
リスティング広告のマッチタイプについては、以下の記事で詳しくまとめています。
関連記事:リスティング広告はキーワードの選び方が重要!利用ツール・注意点も解説-気を付けたいマッチタイプの概念
商標リスティングは商標権侵害になる?
ここまで解説を行ってきた商標リスティングは、商標権の侵害になるのでしょうか。詳しく見てみましょう。
商標権の概要
まず、商標権の概要は以下の通りです。
商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。
商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体的形状や音等も含まれます。
権利の存続期間は10年ですが、存続期間は申請により更新することができます。
(出典:日本弁理士会 商標権と商標出願)
商標リスティングは“原則”商標権侵害にならない
記事中盤で「リスティング広告の広告文や説明文に商標キーワードを用いると、問題になってしまいます。」とお伝えしました。
確かにリスティング広告の広告文や説明文に商標キーワードを使用して、それを事業者からGoogleやYahoo!に報告された場合、広告の出稿を停止されてしまいます。
しかしそれでも、競合他社やアフィリエイターによる商標リスティングが、商標権侵害に当たるケースは稀です。
ただ商標キーワードを使用するだけでは、商標権の侵害とは言えないのです。
ただし“なりすまし”の場合は商標権侵害に
そんな中、商標リスティングが商標権侵害にあたるケースがあります。それはあたかも自社の商標であるかのようななりすましをして広告行為を行った場合です。
例えば「商品Aと同じメーカーが商品Bを新たに開発しました」と広告を打ったと仮定しましょう。
しかし実際には商品Aと商品Bは全く関係のないメーカーが開発した商品であった場合、当然商品Bの広告を出稿した企業は商品Aを開発した企業に対して商標権を侵害していることになります。
ここまで極端な例は滅多にありませんが、商標リスティングを行う際は、「なりすましにならないか」「ユーザーが誤認する可能性はないか」に気をつけなければなりません。
自社商品の商標でリスティング広告が出稿されていた場合はどうすればいい?
商標リスティングが商標権侵害にあたるケースは稀であると解説しました。
自社の商標キーワードでリスティング広告を出稿されて悩んでいる方の中には「それでは打つ手はないのか」と不安を感じる方もいるでしょう。
確かに広告文や説明文への商標キーワードの掲載がなければ、商標キーワードでのリスティング広告出稿を確実に取り消してもらう方法はありません。
しかしそれでも、自社商品の商標を使ったリスティング広告の出稿をやめてもらうために取れる行動はあります。
対競合他社の場合と、対アフィリエイターの場合の2パターンに分けて紹介します。
【競合他社の場合】紳士協定を結ぶ
競合他社が自社の商標キーワードでリスティング広告を出稿していても、なりすましでなければ商標権の侵害にはあたりません。
また広告文や説明文に商標キーワードの掲載がなければ、GoogleやYahoo!の規約違反にもあたりません。
よって上記のいずれにも当てはまらない状態で、どうしても商標キーワードでのリスティング広告出稿をやめてほしい場合は、競合他社と紳士協定を結ぶしかありません。
ここでいう紳士協定とは「こちらも御社の商標キーワードでリスティング広告を出稿しませんから、御社も弊社の商標キーワードでのリスティング広告をやめてもらえませんか」というものです。
この紳士協定に相手が応じてくれるかどうかは分かりません。また応じる義務はありません。
相手が紳士協定に応じてくれなかった場合は、相手の商標キーワードにてリスティング広告を出稿したり、自社の商標キーワードに相手よりも良い条件でリスティング広告を出稿したりといった施策が必要となります。
【アフィリエイターの場合】ASPに連絡する
アフィリエイターが商標キーワードでリスティング広告を出稿している場合、GoogleやYahooの規約には違反していなくても、ASPの規約には違反しています。
よってASPに問い合わせをして、ASP経由でアフィリエイターに連絡を取り、商標キーワードでのリスティング広告出稿をやめてもらいましょう。
Webサイトのお問い合わせフォームから、直接アフィリエイターに連絡を取る方法もあります。しかしトラブルを避けるためには、ASPを挟んだ方が無難です。
アフィリエイターもアフィリエイトの提携を解除されては困るはずですので、連絡に応じてくれるはずです。
広告文への商標キーワード掲載を取り消してもらうことは可能
リスティング広告の広告文や説明文に商標キーワードが掲載されている場合は、GoogleやYahoo!に問い合わせを行うことで、リスティング広告の出稿を取り消してもらうことが可能です。
Google、Yahoo!、それぞれのホームページに記載されている規約について見てみましょう。
Googleの場合
Google は現地の商標法を遵守し、Google 広告の広告が第三者の商標を侵害することを禁止しておりますが、それと同時に、再販業者が商品を説明するなど、特定の状況において第三者が適切に商標を使用できる場合があることも認識しています。
商標権所有者様が Google 広告の広告における商標の使用について Google に申し立てを行った場合は、Google がその商標の使用について調査し、なんらかの制限を加えることがあります。
(出典:Google広告ポリシー ヘルプ)
Yahoo!の場合
弊社では、ユーザーの誤認防止など適切な広告流通を守りブランド毀損を防ぐため、事業者が商標登録をしている場合に限り、第三者による広告文での当該商標の使用を制限する申請を受け付けています。申請いただいた情報をもとに、一定の調査を行い、第三者による当該商標の使用が不適切であると弊社が判断した場合には、第三者による使用を制限する対応を行います。なお、使用を制限した商標は、特定の広告主に対して使用を許諾することも可能です。
(出典:Yahoo!JAPAN マーケティングソリューション 検索広告における商標使用制限について)
自社の商標キーワードが使われているかチェックする方法
自社の商標キーワードでリスティング広告が出稿されているのを1つ見つけると「他の企業も同じことをしているのではないか」と不安になりますよね。
広告文や説明文への商標キーワードの掲載は、GoogleやYahoo!の設定によって、簡単に禁止できます。
一方で商標キーワードでリスティング広告が出稿されているかどうかは、地道に目視で確認するのがベストな選択肢です。
商標キーワードで定期的に検索を行い、自社以外のリスティング広告が表示されるかどうかを確認しましょう。
ただしどんな企業が自社の商標キーワードに対してリスティング広告を出稿しているのかを、完璧に把握することは難しいでしょう。
悪徳企業の場合は、営業時間外に絞ってリスティング広告を出稿するといったこともあり得ますからね。
商標リスティングが気になる方はクロスバズにお任せください
弊社『株式会社クロスバズ』は、リスティング広告運用代行、SNS広告運用代行、LP制作などのサービスを提供しているマーケティング会社です。
商標リスティングを含めた、リスティング広告全般に関するノウハウを保有しています。
リスティング広告の運用をお任せいただく際も、広告アカウントの権限はお客様に譲渡いたします。(一般的なリスティング広告運用代行会社では、広告アカウントの権限を運用代行会社に譲渡しなければなりません)
よって商標リスティングに対する施策も含めて、どういった施策をとっているのかを常に把握可能です。
商標リスティングについて詳しく知りたい方や、リスティング運用でお困りの方は、ぜひ『株式会社クロスバズ』に無料でご相談ください。
月額25,000円〜で、リスティング広告を通じた商品やサービスの売り上げアップをサポートいたします。
まとめ
商標リスティングの概要や、商標リスティングのトラブルを避けるための対処法などについて解説をしました。
商標リスティングに関する知識が一通り分かったのではないでしょうか。
自社・競合他社・アフィリエイターが商標リスティングにどのように向き合えばいいのかを、簡単に表にまとめました。
自社 | 検索画面への露出を2倍にできるので、商標リスティングを活用すべき |
競合他社 | 広告文や説明文への商標キーワードの掲載なし、尚且つなりすましを疑われない場合であれば商標リスティングを行ってもよい |
アフィリエイター | ASPの規約があるため、商標リスティングを行うべきではない |
商標リスティングは、リスティング広告運用の数ある施策の1つに過ぎません。
商標リスティングに関する問題を解決できた後は、リスティング広告全体の運用方法について学びましょう。
リスティング広告運用については、以下の記事で詳しく解説しています。