美容(化粧品)業界は市場競争が激しいうえに、変化する消費者の購買行動にあわせたマーケティング施策も求められる業界です。
このような変化の激しい美容(化粧品)業界で注目されているのが、「コンテンツマーケティング」です。コンテンツマーケティングとは、価値あるコンテンツを提供することでユーザーの考え方や意識を変化させ、売上に結びつける仕組みを構築する活動全般を指します。
この記事では、美容(化粧品)業界でコンテンツマーケティングを行うメリットや代表的な手法について解説します。また、コンテンツマーケティングの成功事例や成功させるポイント、注意点もご紹介しますので、参考にしてみてください。
関連記事:中小企業がコンテンツマーケティングを導入するメリットを解説!課題や成功事例も紹介
目次
美容(化粧品)業界でコンテンツマーケティングが注目される理由
マーケティング戦略を考える際には、業界の特性を理解することが重要です。
ここでは、美容(化粧品)業界の現状や課題と、コンテンツマーケティングの重要性について、次の4つの視点から解説します。
- 美容(化粧品)業界では多数のブランドが乱立し、競争が激しい
- 化粧品・コスメはオンラインショップでの購入が増加傾向にある
- 購入前に、Webで情報収集する人が60%
- 国内だけでなく、海外市場への進出も求められている
美容(化粧品)業界では多数のブランドが乱立し、競争が激しい
化粧品やコスメの市場では、ファッションやメイクのトレンドに合わせて、新ブランドや新商品が次々に生まれています。
経済産業省が2021年に公開した「化粧品産業ビジョン」によると、化粧品市場では常に複数のブランドが競合し、一つのブランドの市場シェアは3%にも満たないことが分かっています。さらに、国内ブランドだけでなく、海外ブランドの日本進出も増加傾向にあります。
そのため、化粧品・コスメのマーケティングでは、消費者ニーズの変化を予測し、迅速に対応することが重要です。
コンテンツマーケティングでは、ユーザーのニーズを調査したうえで、記事形式で情報を提供します。導入することで、変化するニーズに応え、企業の競争力を高めることにつながります。
化粧品・コスメはオンラインショップでの購入が増加傾向にある
美容(化粧品)業界でコンテンツマーケティングが注目される理由として、オンラインショップでの化粧品の購入が増加していることもあげられます。
美容メディアのMIRA(ミラ)が実施した「美容に関するアンケート調査」では、以前は、化粧品の購入方法として「ドラッグストアで購入」と回答した人が全体の89.9%を占めていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行以降、42.7%の人が「購入方法が変わった」と回答し、そのうち81.6%が「ECサイトで購入する」と回答しています。
化粧品のオンライン購入率が上昇していることから、美容(化粧品)ブランドはオンラインショップでの販売戦略の強化が求められます。オウンドメディアなどのコンテンツマーケティングを活用することで、オンラインショップでの購入ニーズに適応できます。
購入前に、Webで情報収集する人が60%
化粧品やコスメの購入時だけでなく、購入前の情報収集の段階にもWebが活用されています。
株式会社スパコロが実施した「スキンケア化粧品購入意識調査」では、化粧品やコスメを購入する前にWebで情報収集する人が約6割もいることが明らかになりました。直接店舗に行く代わりに、インターネットで情報収集や肌診断などを行う人が増えていることが分かります。
特に、「購入前にネットで情報をチェックする」と「アプリやサイトで顔や肌のスキャン・診断をする」と答えた人は、コロナ前から5ポイント以上も増加しています。
ユーザーがオンラインで情報収集する傾向が高まっていることから、コンテンツマーケティングを活用して顧客のニーズに合った情報を提供し、興味関心に応えることが求められます。
国内だけでなく、海外市場への進出も求められている
経済産業省の化粧品産業ビジョンでは、一人当たりの名目GDPが増加すると、一人あたりの化粧品への消費額も増加する傾向にあることが示されています。しかし、日本では少子化と高齢化が進行しており、名目GDPの成長率が低い状況です。
そのため、日本の化粧品産業が成長を維持するためには、海外の成長率の高い市場を積極的に開拓する必要があります。
コンテンツマーケティングは国境を越えて展開することができるため、海外市場への進出にも有効です。ブランドストーリーや価値観を伝えるコンテンツを通じて、海外の消費者との関係を構築することで、ブランドの認知度を高めることが期待できます。
美容(化粧品)業界でコンテンツマーケティングを行うメリット
美容(化粧品)業界で注目されているコンテンツマーケティングですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、美容(化粧品)業界でコンテンツマーケティングを行う5つのメリットについて解説します。
- 潜在層へ認知拡大できる
- 見込み客や既存顧客の購買意欲を高められる
- 新たな顧客体験をオンライン上で提供できる
- ブランディングに役立つ
- 蓄積したコンテンツは自社の資産となる
それぞれ詳しく解説します。
潜在層へ認知拡大できる
美容(化粧品)業界では市場競争が激しいため、自社の化粧品を潜在顧客に広く認知してもらうことが重要です。
コンテンツマーケティングを活用することで、自社の化粧品をまだ知らないターゲット層に対し、ブランドや商品を知ってもらうことが可能になります。
例えば、ブログ記事やSNS投稿・動画コンテンツなど、さまざまな形式のコンテンツを通じて、潜在顧客の興味を引きつけ、ブランド認知度を高められます。
見込み客や既存顧客の購買意欲を高められる
美容(化粧品)業界で見込み客や顧客の購買意欲を高めるためには、ブランドや商品に関する情報を効果的に発信することが重要です。
コンテンツマーケティングによって、化粧品の使い方のコツや効果、最新のトレンド情報などを提供することで、見込み客や既存顧客の商品に対する理解を深め、購買意欲を高めることができる点もメリットの一つです。
新たな顧客体験をオンライン上で提供できる
コンテンツマーケティングを活用することで、新たな顧客体験をオンライン上で提供することが可能になります。
例えば、自社サイト上に、化粧品の使い方をわかりやすく説明する動画コンテンツや、お肌の状態にあわせて最適な化粧品を提案する「オンライン診断サービス」などを掲載することで、店舗へ来店してもらうことなく使用感を紹介できます。記事コンテンツとあわせて公開することで、より詳細な情報も提供できます。
ブランディングに役立つ
美容(化粧品)業界では、ブランドの信頼性や価値を高めるための効果的なブランディングが不可欠です。
コンテンツマーケティングでは自社のブランドの世界観を構築できるため、ブランドの魅力や価値を効果的に伝え、顧客の心に深い印象を残しやすい点もメリットといえます。
ブログ記事やSNS投稿などで、ブランドのストーリーや価値観を伝えることで、ブランドの魅力や価値を効果的に伝えることが可能です。
蓄積したコンテンツは自社の資産となる
コンテンツマーケティングによって蓄積したコンテンツは、Web上の自社の貴重な資産となり、長期的なブランドの成長に貢献します。
ブログ記事などのコンテンツは、SEO対策やリマーケティングなどにも展開できるほか、自社のブランドや商品の情報を発信し続けることで顧客との関係構築にもつながるでしょう。
美容(化粧品)業界のコンテンツマーケティングの手法4選
美容(化粧品)業界で用いられているコンテンツマーケティングの手法には、さまざまな種類があります。
ここでは、美容(化粧品)業界のコンテンツマーケティングの代表的な手法を4つご紹介します。
- オウンドメディア(記事作成)
- SNS
- 動画配信
- メルマガ
オウンドメディア(記事作成)
オウンドメディアとは、自社保有のメディアの総称です。広義ではSNSやパンフレットなども含みますが、近年のビジネスシーンでは、主にブログやコラム形式の自社運用のサイトを意味します。
具体的には、コーポレートサイトのメニューとして設置する方法や、ブログやメディアサイトを別に構築する方法があります。
オウンドメディアによってコンテンツマーケティングを展開する際には、顧客に役立つ記事コンテンツを制作する必要があります。化粧品の使い方や効果、美容に関する情報など、美容(化粧品)業界で顧客が興味を持ちそうなテーマを中心に記事を作成すると良いでしょう。
また、コンテンツの制作とあわせて、SEO対策などのWebサイトへの誘導施策が求められます。さらに、サイトのデザインやテーマ、掲載するコンテンツなどを設定することで、ブランディングの効果も期待できます。
SNS
美容(化粧品)業界のコンテンツマーケティングの手法として、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用してコンテンツを配信する方法も一般的です。
InstagramやFacebook、X(旧:Twitter)などのSNSを活用することで、多くの顧客にブランドや商品の情報を届けることが可能です。
活用例として、Instagramで商品の新着情報や使用方法・お客様の声などを積極的に発信することや、顧客の目を引く写真や動画を投稿することで、ブランドの認知度向上が期待できます。
動画配信
動画配信も、美容(化粧品)業界で用いられるコンテンツマーケティングの手法の一つです。YouTube・TikTok・Instagramなどの動画やショート動画の投稿プラットフォームを活用することで、化粧品の使い方や効果をわかりやすく伝えられます。
具体的には、企業アカウントとしてYouTubeチャンネルを開設し、化粧品の使い方や最新のメイクテクニックを動画で紹介するといった活用方法があります。美容に関するトレンド情報やメイクのハウツー動画など、幅広いコンテンツを提供することで、顧客の興味を引きつけ、ブランドの認知度を高められるでしょう。
メルマガ
メルマガとは、顧客に定期的に情報を配信する手法です。
美容(化粧品)業界のコンテンツマーケティングとして、新商品の情報や限定セールの情報、美容に関するコラムなどをメールで配信することで、顧客とのコミュニケーションを強化できます。
例えば、定期的にメルマガを配信し、新商品の情報や限定セールの情報を顧客に提供するといった方法です。また、美容に関するコラムやメイクのテクニックなど、顧客の興味を引きつけるコンテンツを配信することも一つの方法です。
メルマガを通じて顧客とのコミュニケーションを深めることで、顧客の満足度を高めることや、ブランドへの忠誠度を高めることにも寄与するでしょう。
美容(化粧品)業界のコンテンツマーケティング成功事例3選
「コンテンツマーケティングの具体的なイメージが湧かない、」とお困りの方に向けて、美容(化粧品)業界のコンテンツマーケティング成功事例を3社ご紹介します。
- 事例1. 「美的.com」|株式会社小学館
- 事例2. 「ワタシプラス」|株式会社資生堂
- 事例3. 「オルビスマガジン」|オルビス株式会社
各事例の特徴を見ていきましょう。
事例1. 美容業界の最新トレンドを発信「美的.com」|株式会社小学館
美容専門月刊誌『美的』の公式Webサイト「美的.com」は、美しくなりたい女性たちの願いを追求するための情報を提供するオウンドメディアです。
コンセプトは、「“美容誌実売No.1”の編集部が提供するプロの美容ジャーナリズムサイト」。『美的』本誌の美容記事に掲載された情報のアーカイブや、さらに深く掘り下げたビューティーニュース、人気の美容家によるビューティーコラムなど、高品質な美容記事が充実しています。
同メディアでは、多くの記事が検索上位に表示されています。具体的には、「眉毛サロン」「顔やせ」「クリスマスコフレ」など、月間検索数が5万~16.5万ほどのビッグキーワードで上位を獲得しています。
サイトでは、スキンケア・メイク・ヘア・ネイル、ライフスタイル、ベスコスなどのカテゴリー別に、美容や化粧品に関するさまざまなお悩みに答える記事が掲載されています。
また、美的専属モデルやディレクター、人気タレントによる連載記事も掲載されており、業界の最新情報やトレンドについて常にアップデートすることで、多くの読者を獲得している成功事例といえます。
事例2. 化粧品や美容の悩みを解決するコンテンツで検索上位表示を実現「ワタシプラス」|株式会社資生堂
「ワタシプラス」は、資生堂が運営するオウンドメディアです。同メディアでは、最新の美容トレンドやハウツー記事、肌のチェック方法など、「キレイ」に関する役立つ情報を発信しています。
同オウンドメディアの特筆すべきポイントは、公開されている記事の多くが上位表示されている点です。
例えば、「アイライン 引き方」「ファンデーション 塗り方」といったボリュームの大きいキーワードで検索結果のトップに記事が表示されています。
記事内容も参考にすべき点が多々あります。写真やイラスト・動画を用いてユーザーの悩みを分かりやすく解決するとともに、同記事内で自社商品も紹介しているのです。まず悩みを解決し、ユーザーからの信頼を獲得した上で商品を紹介しているので押し売り感がありません。
商品購入という最終的なコンバージョンにつながるよう、綿密に導線が練られています。
上位表示だけでなくコンバージョンにまでこだわった記事設計は、オウンドメディアを運営する上で非常に参考になるでしょう。
事例3. オルビス社員による商品の使用感記事など、指名検索にも対応「オルビスマガジン」|オルビス株式会社
オルビス株式会社が運営する「オルビスマガジン」は、美容情報やライフスタイルなど、日々の生活をより心地よくするための情報を提供するオウンドメディアです。エイジングケアやメイクなどの美容情報のほか、生活をより充実させるための情報が充実しています。
同オウンドメディアでは、新商品やおすすめ商品の紹介ページ、注文の際に活用できるカタログページ、美容やライフスタイルに関するさまざまな記事が掲載されています。
さらに、オルビス社員による商品の使用感記事など、指名検索に対応するコンテンツも豊富です。実際に、「オルビス」のキーワードでの検索数は月間25万件ほどあり、月に10万人以上の流入が想定されます。
オルビスのように多くの顧客やファンを獲得しているブランドの場合、オウンドメディアは新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客との関係構築やロイヤルカスタマーへの転換にも役立ちます。
例えば、主力商品「オルビスユー」のコンセプトにも通ずる、「内側からキレイに。人気インナーケア(食品)」など、読者のニーズに応えるためのさまざまなコンテンツを提供しています。初期エイジングサインを感じ始めたターゲット層向けの情報を提供することで、読者ニーズに応えながら、顧客獲得に成功しています。
美容(化粧品)業界でコンテンツマーケティングを成功させるポイント
美容(化粧品)業界でコンテンツマーケティングを成功させるためには、いくつかのポイントがあります。
ここでは、次の3つのポイントについて詳しく解説します。
- ターゲットを絞って情報提供する
- 自社の強みを分析・理解する
- 独自の価値提案戦略で差異化を図る
順番に説明していきます。
ターゲットを絞って情報提供する
コンテンツマーケティングを実施する際には、顧客のニーズや興味に合わせた情報提供が不可欠です。特定のターゲット層に焦点を当て、そのニーズに合ったコンテンツを提供することが求められます。
具体的には、ターゲット層の特性やニーズを徹底的に分析し、明確に把握する必要があります。ターゲット層が関心を持つトピックやキーワードを調査し、それに基づくコンテンツを企画・制作しましょう。
ソーシャルメディアやブログ・メールマガジンなど、ターゲット層が利用するメディアやチャネルを選定し、効果的に情報を発信することが重要です。
自社の強みを分析・理解する
競合他社の多い美容(化粧品)業界では、自社の強みを正確に把握し、それを活かしたコンテンツマーケティング戦略を展開することがポイントです。これにより、顧客へ自社ブランドの価値を伝えることができます。
自社の製品やサービスの特徴や利点を明確に把握するためには、「SWOT分析」が役立つでしょう。SWOT分析とは、自社の外部環境と内部環境を「強み・弱み・機会・脅威」の4つの要素で分析する方法です。
他にも、顧客のフィードバックや市場動向をモニタリングし、自社の強みや弱みを把握することも有効です。
独自の価値提案戦略で差異化を図る
美容(化粧品)業界のコンテンツマーケティングで競合他社との差異化を図るためには、独自の価値提案戦略を展開することが重要です。顧客に対して、他社とは異なる付加価値や魅力を提供することで、ブランドの差別化を図ることができます。
例えば、ブランドのストーリーを活かした感情的なコンテンツを制作し、顧客の共感を得る方法があります。具体的には、エシカルな製品を提供している化粧品ブランドの場合、そのブランドの持つ価値観やコミットメントをブランドストーリーとして記事や動画でコンテンツ化し、顧客に訴求するといった方法です。
美容(化粧品)業界でコンテンツマーケティングを行う際の注意点
美容(化粧品)業界におけるコンテンツマーケティングにはメリットも多い一方で、注意すべき法的な規制や指針もあります。
最後に、美容(化粧品)業界でコンテンツマーケティングを行う際の注意点を2つご紹介します。
薬機法違反とならないよう、表記・表現に気をつける
化粧品に関するコンテンツを配信する際には、薬機法に基づく適切な表記や表現に注意する必要があります。薬機法とは、化粧品の表示や広告に関する規制です。
法令違反とならないよう、以下の点に注意しましょう。
- 適切な表示義務の遵守
- 誇大広告や虚偽の表現の禁止
- 医薬品の効果や効能の明示の禁止
化粧品の成分や効果に関する情報を提供する際には、正確かつ客観的な情報を提供し、誤解を招かないようにすることや、誇大・虚偽の表現を行わないようにしましょう。
Googleの品質評価ガイドライン「YMYL」を考慮する
Googleの品質評価ガイドラインでは、ユーザーの生活・健康・財政に関わる情報を提供するページに対して、「YMYL(Your Money or Your Life)」と呼ばれる特に厳しい基準が設けられています。
化粧品に関する情報を提供する際には、正確で信頼性の高い情報を提供することが重要であり、専門家の意見や経験に基づく情報の提供が求められます。
まとめ
美容(化粧品)業界では、市場や社会情勢の変化により、コンテンツマーケティングがますます重要性を増しています。オウンドメディア運用などを通してコンテンツマーケティングを実践することで、新規顧客の獲得や既存顧客のさらなるファン化が期待できます。
コンテンツマーケティングで効果的な成果を上げるためには、オウンドメディアの運用経験やノウハウが豊富なWeb制作会社に相談するのも一つの方法です。
株式会社クロスバズでは、オウンドメディアの記事コンテンツ制作におけるプロセスを一貫して代行いたします。社内での運用に不安が残る場合は、ぜひ一度ご相談ください。