こんにちは。株式会社クロスバズの制作責任者の山崎です。
ポートフォリオを制するものは採用を制する。
Webデザイン業界ではこんな格言があります。
Webデザインという職種は技術職でありますので、職務経歴書や履歴書の見栄よりもポートフォリオの良し悪しが採用にクリティカルに影響を与えます。
逆にいうと、優れた経歴じゃなくてもポートフォリオのクオリティさえ高ければ未経験だろうと採用されるということです。
では、どんなポートフォリオを作れば採用されるのでしょうか?
今回は現役Webデザイナーであり、これまでに500を超えるポートフォリオは見てきたであろう採用担当の山崎が、採用されるポートフォリオの作り方をお教えします。
絶対に作ってはいけないポートフォリオ
1.飲食店・美容室のHPは絶対に作らないでおこう
これはポートフォリオあるあるなのですが、未経験の初心者はついついカフェなど飲食店のHPや、美容室のHPを作りがちです。
おそらく、スクールの課題でカフェHP制作ができたり、先人のポートフォリオを見てとりあえずオシャレそうだしカフェのHPを作ろうという流れかとは思いますが、カフェのHPを作っても加点されることは極めて少ないです。
なぜか。その理由は消費者の行動から考えれば簡単なのですが、あなたが飲食店を探しているとして、オンライン上でどのような探し方をするでしょうか?
- Google検索で条件を絞って、口コミサイトやまとめサイトで評価をもとに探す
- Googleマップでレビュー評価をもとに探す
- グルメキュレーションサイトで、流行りのお店を探す
大きくわけるとこんなところではないでしょうか?
飲食店は口コミサイトや、ポータルサイト、Googleマップが強すぎるので「公式ホームページ」を使って集客しよう。なんてことにはなかなかなりません。
美容室も同じです、ホットペッパービューティーや、Googleマップを使ってお店を探し、ポータルサイト内で予約までできるので公式ホームページに出番はありません。
また、飲食店も美容室もHPを売り場として考えてないので、課題と目的設定が薄く、さらに写真パワーが強いジャンルなので、応募者のデザインスキルも推し量りにくく「なんとなくイメージ写真を使ったかっこいい」だけのHPになりがちです。
さらにいうと、目的設定の甘いHPを作ることで、Webデザインの本質であるお客さまの課題を解決するというビジネス視点が欠けている人材というマイナス評価にすらなりえます。
そのような背景があるので、カフェや美容室のHPを作っても採用担当者に評価されることは少ないので作るべきではないと言えます。
2.架空の企業コーポレートサイトは絶対に作らないでおこう
これもポートフォリオあるあるです。
企業のコーポレートサイト自体は、実際に制作の依頼があるので悪くはないのですが、架空の企業コーポレートサイトは多くの場合で作ったとしても評価されにくいことが多いです。
理由としては、こちらも実際のお客さま(企業)がコーポレートサイトを作る目的を考えるとわかりやすいです。
コーポレートサイトとはなんでしょうか?
一般的なコーポレートサイトは企業の情報を発信するサイトです。
では情報とはなんでしょう。
企業からのニュースや、サービス紹介、企業概要などは情報といえます。
当然これだけではありません。コーポレートサイトでもっとも大事なのは企業の存在意義でありコーポレートアイデンティティです。
この会社は誰のために存在し、社会にどのような影響を与えたいのか、顧客にとってどんな価値を提供できるのか、企業にとって当たり前に存在する理念やビジョンからコーポレートアイデンティティが作られブランドイメージが形成されます。
それを発信、伝えるという目的がコーポレートサイトにはあります。
では、架空の企業コーポレートサイトを作ったとして、未経験のWebデザイナーがコーポレートアイデンティティまで意識できるでしょうか?
そこまでは難しいとしても、現実の市場に則した架空の企業を作り、HPを作ることの目的を明確に設定をし、その目的を達成するための情報設計とブランドイメージの構築ができるでしょうか。
多くの未経験Webデザイナーが作るコーポレートサイトは「なんとなくおしゃれ」なだけの目的意識の低いページになってしまいます。当然です。本来のコーポレートサイトは組織としての様々な文化とアイデンティティを有しています。
そんなものを架空で作る時点で難易度が高く、抽象度の高いページになることは当然といえます。
そのような理由でコーポレートサイトを作っても「なんとなくおしゃれ」な感じのページが作られるだけで、実務をこなしているプロのWebデザイナーから見ると、「つまり、このコーポレートサイトのデザインは企業にとってどう有益なのか」というデザインの本質を捉えられないので評価されることは少ないです。
3.架空のECショップは絶対に作らないでおこう
こちらもたまに見ることがありますが、多くの場合で評価されることはないです。
なぜか。それは商品が売れるかどうかは以下3つが重要であり、ECショップのデザインは売れる売れないかの本質ではないからです。
- プロダクト
- マーケティング
- 売り場
なんとなく、シンプルでオシャレな感じのECフォーマットを作ったとして、なんになのでしょうか。
商品を売りたいのであれば日本最大の売り場であるAmazonや楽天に出品するのがベターであり、D2Cでオリジナルブランドを自社で販売したい場合だとshopifyやBASE、STORESなどいくられもテーマを使ったショップ構築は可能です。
また、ECショップで大事なのはUIでありユーザーがストレス無く購入体験できることが重要です。つまり複雑さがなくシンプルである必要があります。そうなるとデザインの介入は難しく独自性は出しにくいので、採用担当としてもスキルを推し量ることが難しなります。
じゃあ、zozoタウンくらいのショップの規模を想定したら、設計の難易度があがり作り込む余白があり独自性がだせるので評価できるんじゃないかという考えもありますが、それはもはやUI・UXデザイナーの仕事でありWebデザイナーの領域ではありません。
つまり、ECショップのフォーマットを作ったとしても、本質はもっとほかにあるので作っても評価がされることは少ないといえます。
じゃあ、どんなポートフォリオが良いのか?
ここまでは、作ってはいけないポートフォリオを通して、どんな目線でポートフォリオを評価しているのかを解説してきました。
では実際なにを作ったらいいのか? に対する疑問にお答えしていきます。
バナーは評価対象になるのか、ならないのか?
なります。
ただし、バナーはWebデザインほど能力の差が出づらく、なんとなく画像とテキストを貼り付けるだけで形になることもあります。
よほど自信があるバナーで無い限りは、他の応募者との差別化にはならないので評価されることは少ないです。
ポートフォリオの作品数はどのていどがいいのか?
多ければその分加点されるということは全くないです。
ただし、少なすぎても判断しづらいので、Webデザインであれば5つていど作品数があれば十分と感じます。
架空のサイトをポートフォリオに含めていいのか?
架空のサイトが評価されることは少ないのでやめたほうがいいです。
デザインの本質は課題解決です。
お客さまが制作をご依頼するのには当然、それ相応の理由があります。
架空のサービスや企業を考えて、どのような課題を抱えていたそれをどう解決するばいいのか、そこまで考えること自体が難しいので架空サイトの大半は目的のハッキリしないサイトになります。
つまり難しいんです。
なので、実務経験がないのならなおさら、実際のサービスや商材、企業をもとに「私ならこう作る」という視点でサイトを作ることをおすすめします。
その際、「伸ばしシロ」がある丁度いい商材を見つけるのがポイントです、ビフォーアフターのような見せ方をしたら改善幅がわかるので採用担当者が評価しやすくなります。
コーディングはどこまで重視されるのか?
これは会社が募集しているWebデザイナーの役割によります。
ですが、一般的にはデザイン力を重視するので、コーディングは採用されてから覚えるというスタンスでもさほど問題ないかなと思います。
そもそも分業であればコーディングをする必要もないので、デザイン力を磨くことに全振りしていいかと思っています。
ポートフォリオの正解、ランディングページを作ろう。
正解なんて無い、と言ってしまいそうですが、もはやこれを正解ということにります。
答え、ランディングページを作りましょう。
これが結論です。ポートフォリオではランディングページを作りましょう。
ランディングページが一番、Webデザイナーとして能力を発揮できる余白があるので能力を示しやすいです。
なぜか。
デザインの自由度が高い
ランディングページはとにかくデザインの自由度が高いです。それはランディングページは目的があって初めて依頼がくるものなので、課題と解決がはっきりしています。
課題を解決し、目的を達成することこそが正義であり、ランディングページにおいてはブランディングという抽象度の高い概念は影を潜めます。
つまり「抽象度」が低く「具体的」なので、ゴールから逆算してデザインを考えることができます。つまりデザインに意味をもたせやすくなるのです。
明確な目的をもったデザインは強いです。見る人の心を動かします。採用担当者の心も動かします。
そして、そのゴールから逆算した道筋は一つではなく、様々なアプローチ方法をとることができます。目的を達成するという大義名分のもと作られたデザインなので発言力もあり遊びも許容されやすいです。
つまり、他の応募者との差別化もしやすく自分の色をだしやすいです。
コーディングが楽
Webデザイナーは様々な能力が求められます。
そのすべてを一流の水準まで高めるのはほぼ不可能といえます。というか効率が悪すぎます。
すべてを頑張ろうとすると、どれも中途半端になりかねないので、コーディングの学習は最低限で十分だと考えています。
希望する会社の業務内容にコーディングが含まれていても、コーディングは採用後に頑張ります。という姿勢さえとれていればどうにかなると思います。
そういう意味でもランディングページはHTML・CSS・JSの知識だけでコーディングができるため、それ以外のプログラミング領域の学習する必要がないので、その分デザインスキルを向上させることができます。
強い表現が使えるので見る人に印象を与えやすい
これはランディングページは目的があって初めて存在するという特性上、解決したい課題があります。
それは、購入・お申し込みなどユーザーのアクションを求めるものがほとんどなのでユーザーの態度変容が必要となります。
すると当然、ユーザーの感情に刺さるようなデザインや表現にする必要があるのでデザインが力を持ちます。
目的の抽象度の高いページだと、当然デザインの抽象度も高まります。
抽象度の高いデザインは、当然受け取り側もふわっとデザインをイメージで捉えがちです。
ランディングページは表現が強い分、どのていど狙いに則したデザインなのかを判断しやすく、デザインの役割が事業解決に向いているので、実際の案件とのギャップ少ないので、未経験だとしても採用後の働きをイメージしやすくなります。
まとめ
ポートフォリオをどうしようか。というのは未経験Webデザイナーの大きな悩みだと思います。
難しい問題ではありますが、本記事ではランディングページを作ることを正解としました。
まずは騙されたと思って、実際の商材やサービスのランディングページを作ってみてください。目的がハッキリしている分作りやすかったりします。
ポートフォリオを制するものは採用を制する
就職活動がはかどらない方は、ポートフォリオは磨くことに専念してみることをおすすめします。結果としてスキルは上がるので無駄にはなりません。
あなたの就職活動が実が結びますように。